更新日:2019-10-30

【プロドッグトレーナー監修】愛犬が熱中症になった時、飼い主がするべき4つのステップ

【プロドッグトレーナー監修】愛犬が熱中症になった時、飼い主がするべき4つのステップ

昔は夏場にエアコンが無くても、ワンちゃんは元気でした。しかし、今や時代は変わりました。現代の日本は、年々気温が高くなってきています。 地球温暖化、ヒートアイランド現象、ワンちゃんの高齢化、ワンちゃんの小型化、マンション飼育の増加、様々な要素が、人間だけでなく、ワンちゃんの熱中症のリスクまでも増加させています。 今回は、最新の熱中症の情報と対処法をご紹介!オーナーさんがバッチリ準備をして、大切な愛犬の笑顔を守りましょう。

熱中症は気付きづらいから怖い

犬,熱中症

rangsan lerkngam/shutterstock

熱中症は、避けられない遺伝的な病気ではありません。オーナーさんが予防することが出来る病気です。

しかし悲しいことに、人間も犬も、毎年熱中症によって多くの命が奪われています。

それはなぜか?熱中症の初期症状が、気付きづらいからなのです。

熱中症の初期症状

・息がハアハアする。

・よだれがダラダラ垂れる。

 

どうでしょう?これって、ドッグランで遊んでいるワンちゃんに、よくいませんか。

ちょっと暑い日のお散歩中でも、見かけますよね。初期症状が気付きづらいからこそ、危険信号を見逃して、命に関わるところまで行ってしまうのです。

ワンちゃんが熱中症になった時の、オーナーさんの第一声は「え!?さっきまで元気だったのに急にどうしたの?」が多いのも、こういった理由からなのです。

熱中症に備えるため、もう少し多くの症状を知っておきましょう。

熱中症の症状

・愛犬の内股に手を当てると、いつもより体が熱い。40度以上は超危険。

・ぐったりしている。

・食欲がない。

・下痢や嘔吐。

・尿の色が濃い(脱水状態や、血尿の可能性)。

・歯茎がいつものピンク色より白っぽい。

・伸びやすい首元の皮膚を3㎝程度持ち上げて手を離したとき、いつもより戻りが悪い。人間にもやる方法で、脱水状態だと皮膚がプルンと戻らない。

 

熱中症は「ちょっと身体がダルい」なんて軽い問題ではなく、内臓や脳に一生回復しないダメージを与える可能性があります。

いずれか1つでも当てはまれば、それは「元気なワンちゃん」ではありません。

その時点で赤に近い黄色信号だと思って、早めに動物病院に連絡をして、獣医さんに指示を仰ぎましょう。

熱中症が起きやすい環境

犬,熱中症

Gorlov-Studio/shutterstock

とはいえ、症状だけだと熱中症かどうか、判断しづらいですね。そこで、環境要因も踏まえて「症状×環境」で考えてみましょう。

熱中症になりやすい環境

・犬は人の+5℃:

ワンちゃんは毛皮を着て、人間よりも地面の近くにいる。人間の気温より、5℃高く感じていると考えること。人間が半袖になりたくなる日は、ワンちゃんはすでに暑い。

 

・気温25度、湿度60%以上はつらい:

汗をかけないワンちゃんにとって、湿度による息苦しさは強敵。「気温×湿度」で考えること。

 

・5~10月の時期:

暑い夏場はもちろん危険だが、エアコンを使うか迷う56月や10月頃も熱中症が多い。

 

・体温調節が難しいワンちゃん:

小型犬、短頭種、シニア犬、黒っぽいワンちゃんなどは特に熱中症リスクが高い。

 

「熱中症の症状」と「熱中症になりやすい環境」を確認したことで、危険を感じる感覚をつかめてきましたね。ここまで読んでくださった皆さんは、愛犬の小さな異変にも気付けるようになってきているはずです。

熱中症にさせない!予防が重要

犬,熱中症

svitlini/shutterstock

熱中症になってしまうと命の危険に迫られます。何より一番大切なことは、熱中症にさせないこと。

予防こそ第一選択!さあ、最新の予防法を学びましょう。

屋外での予防

・ひんやり服、クールバンダナ:

水で湿らせて使うものや、生地がひんやりするもの、保冷剤を入れるものなど、いろいろな商品を活用する。

 

・霧吹き:

スプレーの音が苦手でなければ、お散歩しながらミストをワンちゃんの身体にかけて、気化熱で冷やす。

 

・こまめに休憩、給水:

愛犬が「僕、もっと走れる!」と駆け回っていても、愛犬任せにせず、人間の判断で休憩させる。

 

・ワンちゃん用の経口補水液を準備:

犬用の商品を持参する。

 

・暑い時季の散歩:

長時間ではなく、小分けにして回数を増やす。日中は控える。

室内の予防

・エアコン:

夏場は必須。人間が半袖なら、エアコンをつけておく方が間違いない。熱中症は散歩中のイメージがあるが、実は室内で発生することも多い。

 

・愛犬が温度を選べる空間づくり:

ハウスに入れたままエアコンが当たっていると、冷えすぎて下痢になるワンちゃんも多い。愛犬自身が好きな温度を選べる環境を作る。

 

・車でお留守番させない:

5~9月の車内はすぐに40度を超える。コンビニに行く数分でも、死のリスク。

熱中症かも!?その時やるべき4つのステップ

犬,熱中症

eva_blanco/shutterstock

熱中症が起きたときにどうすべきなのか。4つのステップを確認しておきましょう。

熱中症が起こったときの対処

例:お散歩中に道路で熱中症になってしまった場合。

 

ステップ① 安全な日陰へ移動 

日の当たらない道の脇によけて、落ち着いて対処が出来る場所を確保しましょう。

 

ステップ 全身に水をかける

寝かせた愛犬の上から、身体全体が濡れるように水をかけ流す。手持ちの水が少ない場合は、身体の上にハンカチを広げて、その上から水をかけると、少量でも水が行き渡りやすい。流水や、オシッコ処理用のペットボトルの水などを活用。体を冷やす目的で水をかける訳ではないので、常温でOK

 

ステップ うちわで扇ぐ

打ち水と同じで、気化熱を使う。身体に水をかけたうえで風を送り、体温を下げていく。風が送れるなら、ウチワ以外でもOK

 

ステップ うちわで扇ぎながら、病院に電話

体内の熱を逃がすには、点滴で体内を冷やしたりする医療行為が必要。その場で応急対処をしつつも、少しでも早く病院に搬送することを目指す。

オーナーさんは、まず大きく2回深呼吸して落ち着いて。うちわで扇ぎながら動物病院に電話をして、獣医さんに指示を仰ぎましょう。人手があれば、扇ぐ役と電話役で手分けしましょう。

 

※ワンちゃんの意識がもうろうとしていたり、泡をふいていたり、震えていたりしたら、さらに緊急性が高まります。搬送するために車などの移動手段も同時に手配しましょう。

熱中症かも!?その時やってはいけないこと

犬,熱中症

Soontorrapoj Tipprasert/shutterstock

ダメ 氷水に漬ける

急に冷やすことで、血管が収縮する。体温が放出されずに、熱が体内にこもって逆効果。

 

ダメ 冷やしすぎる

保冷剤や氷だらけで全身を冷やすと、冷やしすぎて低体温になる危険もある。保冷材は使いようで、バンダナに包んで首元に巻いて熱中症予防をするのはGood。しかし、熱中症になった後には冷やしすぎる可能もあり、注意が必要。

 

ダメ 動物病院に行かない

意識が戻って大丈夫そうに見えることもある。しかし、一度加熱されたゆで卵は、生卵には戻らない。体内でダメージを受けた内臓や脳を、放っておくのは大変危険!様子を見るかどうかも含めて、治療の判断は、獣医さんに相談すること。

熱中症になる前に。オーナーさんの事前準備

犬,熱中症

Florida Chuck/shutterstock

熱中症の対策は把握できましたね。最後に、愛犬を守るための、大切な準備があります。

 

準備 動物病院の連絡先確保

ペットに救急車を呼ぶ「119」はありません。オーナーさんが、動物病院に連絡する必要があります。しかし、24時間365日の病院は、なかなかありません。出先でも夜中でも祝日でも連絡できるように、3カ所以上の病院の連絡先を電話帳に入れておきましょう。

 

準備 上述の<熱中症が起こったときの対処>を練習 

対処の流れを家族全員でやってみましょう。例えば、うちわで扇ぎながら、スマホで動物病院に連絡しようとしても、片手では難しかったりもします。実際に「ワンちゃんを日陰に移動~!」「お水かけて、送風~!」「もしもし、動物病院ですか?うちのチョコちゃんが熱中症のようです…」など、本番さながらの練習をしてみましょう。頭でわかっているのと、身体が動くのは全く別物。避難訓練ならぬ、対処練習をすることで、落ち着いて行動出来ますよ。

 

準備 対策グッズを準備

家で事故が起きたときはともかく、お散歩中だとうちわやハンカチ、お水などが無くて困ることがあります。散歩セットの中に、熱中症対策セットを入れておきましょう。

まとめ

犬,熱中症

SSpillias/shutterstock

繰り返しになりますが、熱中症は運命でも病気でもありません。

オーナーさん次第で愛犬を守ることが出来るのです。暑すぎるから水を飲もうかなとか、エアコンの温度を調整しようかなとか、愛犬自身で守ることは出来ません。

皆さんの気遣い、心遣いで、可愛い愛犬の笑顔を熱中症から守りましょう。

  • 大久保羽純
  • 大久保羽純プロドッグトレーナー
所属
PERRO株式会社 代表取締役
SUNNY Dog Training Partner 代表
東京都動物愛護推進員
健全なペットとの暮らしを目指す協会P-ALIVE 代表
家庭動物共生教育支援フォーラム(FAES) 理事
略歴
1985年:
東京都江東区に生まれる。
フェレット5匹、デグー12匹、亀3匹と暮らす。

2003年~2007年:
東海大学工学部卒業。

2007年~2011年:
某製薬会社MR(医薬品営業)勤務。

2012年:
ドッグトレーナー学校在学。

2012年~2013年:
海外留学でトレーニング修行。
ニュージーランド動物保護施設「SPCA Auckland」で犬・猫のケアやトレーニングをボランティアスタッフとして学ぶ。

2013年~現在:
出張トレーニング・しつけ教室・講演などを行う「SUNNY Dog Training Partner」を設立。
世界の保護施設、トレーニングを学ぶため10カ国以上を視察、滞在。
外国人の夫と国際結婚。保護犬ジャックラッセルテリアと家族になる。

2014年~2017年:
関東の犬のトレーニング施設4カ所で勤務。
関東の動物保護施設で勤務。

2018年~2019年:
都内専門学校でトレーニング実習講師として勤務。

2018年~現在:
「健全なペットとの暮らしを目指す協会P-ALIVE」を設立。
「家庭動物共生教育支援フォーラム(FAES)」理事に就任。

2017年~現在:
犬に関するコンサルティング・トレーニングなどの総合相談業務を行う「PERRO株式会社」を設立。
代表取締役に就任。
世界中の犬と人との幸せな暮らしのサポートのため、日々邁進。
資格
・米国CCPDT認定国際ドッグトレーナー資格 CPDT-KA所持
・PDTA認定ドッグトレーナー
・The Smart Dog Owner Academy Basic / Advance 修了
・SPCA Auckland Volunteer
・東京都動物愛護推進員
・愛玩動物飼育管理士1級
・日本ペットシッター協会公認ペットシッター士
・高等学校教諭第一種免許
・Advanced Open Water Diver
・P-ALIVEペット安全生活101講演認定講師

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