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熱中症は気付きづらいから怖い
(rangsan lerkngam/shutterstock)
熱中症は、避けられない遺伝的な病気ではありません。オーナーさんが予防することが出来る病気です。
しかし悲しいことに、人間も犬も、毎年熱中症によって多くの命が奪われています。
それはなぜか?熱中症の初期症状が、気付きづらいからなのです。
熱中症の初期症状
・息がハアハアする。
・よだれがダラダラ垂れる。
どうでしょう?これって、ドッグランで遊んでいるワンちゃんに、よくいませんか。
ちょっと暑い日のお散歩中でも、見かけますよね。初期症状が気付きづらいからこそ、危険信号を見逃して、命に関わるところまで行ってしまうのです。
ワンちゃんが熱中症になった時の、オーナーさんの第一声は「え!?さっきまで元気だったのに急にどうしたの?」が多いのも、こういった理由からなのです。
熱中症に備えるため、もう少し多くの症状を知っておきましょう。
熱中症の症状
・愛犬の内股に手を当てると、いつもより体が熱い。40度以上は超危険。
・ぐったりしている。
・食欲がない。
・下痢や嘔吐。
・尿の色が濃い(脱水状態や、血尿の可能性)。
・歯茎がいつものピンク色より白っぽい。
・伸びやすい首元の皮膚を3㎝程度持ち上げて手を離したとき、いつもより戻りが悪い。人間にもやる方法で、脱水状態だと皮膚がプルンと戻らない。
熱中症は「ちょっと身体がダルい」なんて軽い問題ではなく、内臓や脳に一生回復しないダメージを与える可能性があります。
いずれか1つでも当てはまれば、それは「元気なワンちゃん」ではありません。
その時点で赤に近い黄色信号だと思って、早めに動物病院に連絡をして、獣医さんに指示を仰ぎましょう。
熱中症が起きやすい環境
(Gorlov-Studio/shutterstock)
とはいえ、症状だけだと熱中症かどうか、判断しづらいですね。そこで、環境要因も踏まえて「症状×環境」で考えてみましょう。
熱中症になりやすい環境
・犬は人の+5℃:
ワンちゃんは毛皮を着て、人間よりも地面の近くにいる。人間の気温より、5℃高く感じていると考えること。人間が半袖になりたくなる日は、ワンちゃんはすでに暑い。
・気温25度、湿度60%以上はつらい:
汗をかけないワンちゃんにとって、湿度による息苦しさは強敵。「気温×湿度」で考えること。
・5~10月の時期:
暑い夏場はもちろん危険だが、エアコンを使うか迷う5~6月や10月頃も熱中症が多い。
・体温調節が難しいワンちゃん:
小型犬、短頭種、シニア犬、黒っぽいワンちゃんなどは特に熱中症リスクが高い。
「熱中症の症状」と「熱中症になりやすい環境」を確認したことで、危険を感じる感覚をつかめてきましたね。ここまで読んでくださった皆さんは、愛犬の小さな異変にも気付けるようになってきているはずです。
熱中症にさせない!予防が重要
(svitlini/shutterstock)
熱中症になってしまうと命の危険に迫られます。何より一番大切なことは、熱中症にさせないこと。
予防こそ第一選択!さあ、最新の予防法を学びましょう。
屋外での予防
・ひんやり服、クールバンダナ:
水で湿らせて使うものや、生地がひんやりするもの、保冷剤を入れるものなど、いろいろな商品を活用する。
・霧吹き:
スプレーの音が苦手でなければ、お散歩しながらミストをワンちゃんの身体にかけて、気化熱で冷やす。
・こまめに休憩、給水:
愛犬が「僕、もっと走れる!」と駆け回っていても、愛犬任せにせず、人間の判断で休憩させる。
・ワンちゃん用の経口補水液を準備:
犬用の商品を持参する。
・暑い時季の散歩:
長時間ではなく、小分けにして回数を増やす。日中は控える。
室内の予防
・エアコン:
夏場は必須。人間が半袖なら、エアコンをつけておく方が間違いない。熱中症は散歩中のイメージがあるが、実は室内で発生することも多い。
・愛犬が温度を選べる空間づくり:
ハウスに入れたままエアコンが当たっていると、冷えすぎて下痢になるワンちゃんも多い。愛犬自身が好きな温度を選べる環境を作る。
・車でお留守番させない:
5~9月の車内はすぐに40度を超える。コンビニに行く数分でも、死のリスク。
熱中症かも!?その時やるべき4つのステップ
(eva_blanco/shutterstock)
熱中症が起きたときにどうすべきなのか。4つのステップを確認しておきましょう。
熱中症が起こったときの対処
例:お散歩中に道路で熱中症になってしまった場合。
ステップ① 安全な日陰へ移動
日の当たらない道の脇によけて、落ち着いて対処が出来る場所を確保しましょう。
ステップ② 全身に水をかける
寝かせた愛犬の上から、身体全体が濡れるように水をかけ流す。手持ちの水が少ない場合は、身体の上にハンカチを広げて、その上から水をかけると、少量でも水が行き渡りやすい。流水や、オシッコ処理用のペットボトルの水などを活用。体を冷やす目的で水をかける訳ではないので、常温でOK。
ステップ③ うちわで扇ぐ
打ち水と同じで、気化熱を使う。身体に水をかけたうえで風を送り、体温を下げていく。風が送れるなら、ウチワ以外でもOK。
ステップ④ うちわで扇ぎながら、病院に電話
体内の熱を逃がすには、点滴で体内を冷やしたりする医療行為が必要。その場で応急対処をしつつも、少しでも早く病院に搬送することを目指す。
オーナーさんは、まず大きく2回深呼吸して落ち着いて。うちわで扇ぎながら動物病院に電話をして、獣医さんに指示を仰ぎましょう。人手があれば、扇ぐ役と電話役で手分けしましょう。
※ワンちゃんの意識がもうろうとしていたり、泡をふいていたり、震えていたりしたら、さらに緊急性が高まります。搬送するために車などの移動手段も同時に手配しましょう。
熱中症かも!?その時やってはいけないこと
(Soontorrapoj Tipprasert/shutterstock)
ダメ① 氷水に漬ける
急に冷やすことで、血管が収縮する。体温が放出されずに、熱が体内にこもって逆効果。
ダメ② 冷やしすぎる
保冷剤や氷だらけで全身を冷やすと、冷やしすぎて低体温になる危険もある。保冷材は使いようで、バンダナに包んで首元に巻いて熱中症予防をするのはGood。しかし、熱中症になった後には冷やしすぎる可能もあり、注意が必要。
ダメ③ 動物病院に行かない
意識が戻って大丈夫そうに見えることもある。しかし、一度加熱されたゆで卵は、生卵には戻らない。体内でダメージを受けた内臓や脳を、放っておくのは大変危険!様子を見るかどうかも含めて、治療の判断は、獣医さんに相談すること。
熱中症になる前に。オーナーさんの事前準備
(Florida Chuck/shutterstock)
熱中症の対策は把握できましたね。最後に、愛犬を守るための、大切な準備があります。
準備① 動物病院の連絡先確保
ペットに救急車を呼ぶ「119」はありません。オーナーさんが、動物病院に連絡する必要があります。しかし、24時間365日の病院は、なかなかありません。出先でも夜中でも祝日でも連絡できるように、3カ所以上の病院の連絡先を電話帳に入れておきましょう。
準備② 上述の<熱中症が起こったときの対処>を練習
対処の流れを家族全員でやってみましょう。例えば、うちわで扇ぎながら、スマホで動物病院に連絡しようとしても、片手では難しかったりもします。実際に「ワンちゃんを日陰に移動~!」「お水かけて、送風~!」「もしもし、動物病院ですか?うちのチョコちゃんが熱中症のようです…」など、本番さながらの練習をしてみましょう。頭でわかっているのと、身体が動くのは全く別物。避難訓練ならぬ、対処練習をすることで、落ち着いて行動出来ますよ。
準備③ 対策グッズを準備
家で事故が起きたときはともかく、お散歩中だとうちわやハンカチ、お水などが無くて困ることがあります。散歩セットの中に、熱中症対策セットを入れておきましょう。
まとめ
(SSpillias/shutterstock)
繰り返しになりますが、熱中症は運命でも病気でもありません。
オーナーさん次第で愛犬を守ることが出来るのです。暑すぎるから水を飲もうかなとか、エアコンの温度を調整しようかなとか、愛犬自身で守ることは出来ません。
皆さんの気遣い、心遣いで、可愛い愛犬の笑顔を熱中症から守りましょう。